SFマガジン60周年記念号 「本の泉 泉の本」
SFマガジン、還暦ですって! どうりでわしらが年を取るはずじゃ!
というわけで、早川書房のSFマガジン、通巻737号、2020年2月号は、60周年記念号と相成りました。この表紙、「あれ、なんか見たことある……」と思われた方は相当SFマガジン買ってるよね……。イラストを描かれた加藤直之さんによると、過去のSFMの印象的だった表紙のモチーフを取り入れてるのだそうです。
で、私も今回、久しぶりに短編で登場させていただきました。「本の泉 泉の本」という、原稿用紙で45枚くらいかな、小ぶりな作品です。編集でつけてくれたキャッチコピーがまたステキで。「四郎と敬彦は、今日も古書をあさる。これは、ただぞれだけの、夢のような短編」。イラストは、『カント・アンジェリコ』の文庫版や『ヴェネツィアの恋人』にステキな表紙を描いて下さった佳嶋さん。ほんとにちょっとした短編なのですが、これ以上ないスゴイ布陣で世に出させていただきました。
で、この二人しか出てこない登場人物の「四郎」と「敬彦(たかひこ)」ですが、大方の読書子の読み通り、元ネタはあの人とあの人ですw まあ、二人ともちよっとずついろんな人のアマルガムではあるのですが、メインのネタはそうですよ、名前に数字がついて庭にプレハブ書庫が三つあるあの人と、その人が本を買うところを眺めていることが多い「彦」がつく人w ちなみに四郎さんは、私が2017年に小説現代に書いた短編「ハンノキのある島で」で言及された四郎さんです。「ハンノキ」の何年か前のお話。「ハンノキ」は今、日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2018』で読むことができます。
実はこの「本の泉」は、今年の11月初旬に急に「降りて」きて、二週間弱で書き上げ、以前から何か短篇があったら送るようなことをうっすらと約束していた塩澤編集長に送ったところ、急遽「60周年記念号に載せましょう!」と言っていただき、かなり頑張ってページのやりくりをしていただいたようで、掲載確定がいつだったかなあ、もう12月になるよ、っていう頃でした。着想から掲載決定まで三週間あるかないか。これは遅筆な私からするともう光速超えた感じの速さでした。
で、ゲラをやっているうちに、星敬さんが12月2日に亡くなったという知らせがあって……。塩澤さんと相談して、「彦」のつく登場人物の方の名前に「敬」を入れたという次第です。
おそらく人類史上最も長くSFMにかかわって来たであろう星敬さん……。私とは、SF作家クラブの会合やパーティなどでお会いするたび病気の話で盛り上がる(?)病人仲間でした。でもまさかそんなにお加減が悪いとは知りませんでした。塩澤さんとも話したのですが、「本の泉」、図らずも星さんのレクイエムみたいな話。そうでなくても、SFMで塩澤さんが書いている通り、今年はSFMにかかわった多くの方が亡くなった、ただ亡くなっただけではなくなんか急逝だったような方が多くて……。もしかしたら塩澤さんも私も、何かに呼ばれたのかなあ、などと考えたりします。
という背景があるわけですが、元ネタの人たちを知っている方からも知らない方からもご高評をいただいておりまして、ありがたい限りです。ささやかな一編ではありますが、本と小説とSFマガジンを愛する全ての方に、この作品を捧げたいと思ったております。
良いお年をお迎えください。
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