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2017年10月16日 (月)

とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話

518hohova3l魔がさしてこれを読んでしまいました。

佐倉色『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』

もちろん、それぞれの人物の発言の細部やニュアンス等は、ただ一人の著者の表現をそのまま鵜呑みにすることはできないかもしれない。が……まあ正直、小説の業界にいる人間としては「ほぼまんま事実」だろうな~と思う次第である。

小説の業界もね……褒められたもんじゃないので。私も特定の出版社の特定の編集者についてこのブログでもいろいろ書きましたしね~ははは。でも、これは私なんかよりもっとヒドイ話。もしこの著者の描いた先方の態度やニュアンスが全部大嘘だったとしても、色紙の件とか無断転載の件、ネタバレの件などは、マンガ業界に関わっている私の友人たちからも直接確認が取れる事実で、その事実だけでも相当なものである。著者は社会人経験が豊富なためか、かなり冷静に事態に対応できたと思う。その、第三者からも確認できる事実関係に基づけば、この著者の描写は信頼に足るものであろうと推定できる。

しかしも、こういうのとか、業界の内部で起こるあれこれを見ていてつくづく思うのは、「やっぱりみんな新人賞でデビューしたほうがいいよ」ということだ。

今はネットや同人誌等、様々な発表媒体がある時代だ。一口にネットと言っても、その中にも発表のフォーマットがいろいろある。新人賞や商業デビューにこだわらずに書きたい(描きたい)ものが発表できる時代だ。実際、この著者の佐倉さんも、ネットでの発表が商業デビューにつながっている。しかし、このパターンの最大の問題点は、業界内の横のつながり、先輩たちとのつながりがなく、担当編集者という首の皮一枚で業界とつながった状態でデビューせざるを得ないことだ。

やっぱり私は思う。いろいろ発表媒体がある今だからこそ、是非、新人賞でデビューしてほしい、と。マンガとか小説とかイラストとかのジャンルを問わず、是非、できるだけ「いい新人賞」でデビューしてほしい。それはデビューする時点で自分の存在をより広く業界で知ってもらい、また授賞式などで他社の編集者や先輩たち、評論家たちと知り合って、身を守る術とか情報の交換をできるようにし、業界を知り、相談できる、信頼できる相手を得るためだ。

私はファンタジーノベル大賞のファイナリストとして、鳴りものも人脈も何もなくデビューしたのだが、その前に、大学院時代のバイトによって出版社(特に講談社)のいろいろな部門のベテラン編集者の方々と知り合うことができ、ここから得た情報がその後の作家人生に大いなる糧、智恵となったのだった。そして新人を育てないと言われる新潮社からデビューした後に途方に暮れていた時に助け舟を出してくれたのも講談社の内部の方々だった。それでも苦労した。けどでも彼らのおかげで命がつながったのだ。やっぱり、持つべきものは「業界内の信頼できる先達」なのである。これを得るために、新人の方々はどうか、くれぐれも「いい新人賞」からデビューして欲しいのだ。

創作の業界に関してヒドイ話はいくらでもある。ヒドイ業界人も死ぬほどたくさんいる。ていうか私を「ろくな奴じゃねえ」と思っている業界人も一人や二人や三人や四人ではないだろう。でもね、でも私は、そんな業界をクリーンアップしろとは思わないのだ。ロクでもねえダメなやつとか、ドロドロした因縁とか、陰謀とか、対立とか、ほかの社会では通用しないようなヒドイこととか、あってもいいと思っている。みんなそれぞれの知恵とか陰謀とか人脈で乗り切れ、と思う。何故なら、創作はそもそも「まともな産業」ではないのだ。「まとも」でもなければ「産業」でもないのだ。まともさとか、効率のいい生産とか、経済的な正常さではくくれない、人間の不条理な部分とか、突出しでダメな部分とか、あっという間に踏みにじられてしまいそうなほど聖なる部分とか、そういうものに寄り添うのが創作であり、人間の中にある「普通の社会」ではくみ取れない側面こそがその創作の原動力だからだ。

だからこそ、この業界はムチャクチャでいい、そしてその中でやってゆく人のつながりを得るため、新人の皆様には新人賞でデビューしてほしいのだった。

最後に、私がファンタジーノベル大賞の候補作になった『ムジカ・マキーナ』で無冠でデビューする話に乗るか、それは断って次の作品で次のファンタジーノベル大賞に応募するかで迷っていた時、(当時)講談社総合編纂局の関山一郎さんとホワイトハート文庫の小島香さんに言われた言葉が私の人生を決定づけた話。「デビュー作は作家にとって一生使う名刺のようなものだ。あなたはこれから他にもいい作品を書くだろう。それで賞を取ってデビューしたいという気持ちはわかる。でも『ムジカ・マキーナ』は一生使う名刺にふさわしい作品だ。やはり肩書を犠牲にしてでも『ムジカ・マキーナ』でデビューしたほうがいい」。彼らの言葉は正しかった。同作は今でも、あの時代(1995年)の代表作の一つとして数えられている。

あれっ……これって、新人には新人賞でデビューしろと言いつつ、自分はそうしなかった話になってるじゃん……いやその、業界内で信頼できる人々とつながれるデビューをしましょうという話よ。そのためには、新人賞というフォーマットがもっとも労力か少なく、確実だという話。そして、いい編集者は大切にしましょうという話。

この本の著者佐倉さんも、誹謗中傷という犠牲は大きかったかもしれないが、この件によって横と縦のつながりも得られただろう。今後の支えになるだろうと思う。そしてまた自分自身も、こういう人たちの助けになれるような人間でありたいと思うのであった。

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