『ビッグバンとインフレーション 世界一短い最新宇宙論入門』
ジョン・グリビン著『ビッグバンとインフレーション 世界一短い最新宇宙論入門』の翻訳をやりました。……いや、なんかもう、行きがかり上、そういうことに
グリビン博士は日本でも70年代末からブルーバックスで翻訳が出たり、近年も『シューレディンガーの猫、量子コンピュータになる』が翻訳されたりしていてご存知の方も多かろうと思いますが、近年は電子出版に力を入れているようで、この本の原書もKindle版のみで、日本語版もKindleオンリーです。
量は原稿用紙換算でたったの160枚程度! こういうムズカシイ話ってあんまり詳しく書かれてもさっき何読んだか分かんなくなったりするのでw、こういうミニマムな本って実は必要だと思うことです。これ読んでから佐藤勝彦さんの本とかを読むわけですよ。
表紙の柄がスゴイですがw、これは、宇宙背景放射の観測データのイメージでしょう。
私が翻訳することで、私は名を上げるより、「なんで専門外の分野に色気出してんの?」と評判を落とす危険性もあるんですが、いやもう……いろいろ緊急事態で、自分の立ち位置とか計算してる場合じゃなかったのです。もう一歩意訳に踏み込めればもっとスムースな訳文になっただろうな~とか、もっと適任な人もいるだろうな~とか、今なおぐるぐるしてますが、自分の小説の執筆を完全休止して全力を尽くしました。翻訳にご協力くださった皆様、ありがとうございます。文中、グレゴリー・ベンフォードの未訳作品をさも知ってるかのように訳注してますが、あれは山岸真さんのご協力によるものですw
しかし私の最大の強みは、「文系の人間には何が分からないか」が分かっているところだw 何しろ自分が転び理系だからなw なので、文系フレンドリーを心がけました。原書では冒頭からいきなりハードル高い言葉が並んでるところがあるのですが、そういうのをちょっと丸めたり。あと、日本人研究者の研究をフォローした訳注も足しました。あんまり増やすと「とにかく短い」という売りが台無しになっちゃうので最小限にとどめましたが、これでノーベル物理学賞関係のニュースなどにもちょっとは関連付けしやすくなったのではないかと思います。
日本人のノーベル物理学賞受賞者が増えている一方で、今後の基礎研究の先細りが懸念されているようですが、そうであるからこそ、文系の人や特に若い人に、こういう「とっかかりの本」を読んでちょっとでも宇宙に興味を持ってもらえたら、と、転び理系の作家は思うのでありました。
理系だった頃(って高校生の頃ですけどね)、「将来はカール・セーガンのような仕事がしたい!」と思ってましたが、まさか土星の公転周期一回分くらいの時間が経ってからそれに近接した仕事が回って来るとは思いませんでした。いやあ、人生何が起こるか分かりませんなあ。
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