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2015年10月 9日 (金)

発売:書き下ろし日本SFコレクション NOVA+ 屍者たちの帝国

またちょっと体調的にアレな人になってしまい、盛り上がってたくさん人が来た発売日に新しいエントリをupしていなかったという体たらくとほほ。まあ救急車も来てないし緊急入院にもなってないのでご心配なく~。

9784309414072てなわけでいろいろありましたが、『屍者たちの帝国』、発売になってございます。私は期待されているであろうドストエフスキーネタを「やりたい放題」で「爆走」し「本書収録作品の中でももっともオタク度の高い作品」(大森望氏談w)にした「小ねずみと童貞と復活した女」を書いています。なんじゃこりゃのタイトルは、ちゃんと読めば分かるようにしてございます。「小ねずみ」なんて、あまりにも辻褄が合いすぎてて自分でも笑っちゃいますが。

私のを読んだ人はすでにかな~りウケてくださってるようで何よりw 『白痴』+『アルジャーノン』とか、『白痴』+『ドウエル教授』って、やってみたかったんだよお~! なので、この企画のお話が来た時、最初は「さすがにこれだけ縛りがきついとな~。断っちゃおうかな~」と思ったものですが、次の瞬間、ワタシの無意識が「アレができるぞアレが! コレもできるじゃん! いやいや、ソレもできるし!」と叫び、茨の道を行った次第です。短編一本のために読み返す他人の小説や映画がむちゃくちゃ多くて(いやさすがにキャプテン・フューチャーは全部は読み返しませんでしたけど)、これが一番キツかったです。『屍者の帝国』も読み直したし、よりによって映画にはタルコフスキーが二本w 『ドウエル教授の首』は若い世代でも知ってる人が多いようで、ナスターシャが復活した時点で『ドウエル教授』のブリケだと気づく人が案外いるようです。そうかみんなけっこう知ってるのかw 昭和のSF少年少女だけかと思ってたよw あと、「液体窒素」が出てくる前にロゴージンとナスターシャの生活が『ソラリス』のケルビンとハリーのネタだと気づく人もいましたね(ちなみに1870年ごろには窒素はすでに液体化されていたので、意外なところで嘘じゃない罠)。そうです。バルト海の描写と、ロゴージンとナスターシャの会話は沼野版『ソラリス』のまんま引き写しです。気づくのか……お前……オタクだなあw 

痛恨だったのは、霊素と魂と知性の関係はオリジナルだったのですが、そこに気づいてもらいにくいこと。どうもこれも何か元ネタがあると思われちゃうようで。あと、『白痴』と『サクリファイス』の考察はかなり真面目にやってるんですが、みんなこんなのスルーだよね。『サクリファイス』の冒頭では、主人公が役者だった若い頃にムイシュキンを演じていて云々というくだりがあり、私はこれが『サクリファイス』解釈の要だと思っていたのです。まあ、基本、ネタとストーリーでウケていただければそれでいいっす!

一足先に来た見本を読ませていただきましたが、こんなに縛りのきっついアンソロジーでも、個性って隠しきれないもんですねえ。どういう読書傾向の人が読んでも、必ず自分なりのベストが見つかるかと思います。とにかく今年後半のマストバイ。いや本当、買って損はないです!

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ロシア・ソ連」カテゴリの記事

コメント

「NOVA+ 屍者たちの帝国」買いました読みました。
「小ねずみと童貞と復活した女」超絶面白かったです。
元ネタを読み返したり観返したりしなくちゃの楽しみもできました。
面白い小説や音楽って過去のコンテンツに再び価値(経済的な部分含め)を与えるんですね。

私の座右の銘が「換骨奪胎」っつうくらい「元ネタ有りの再構築」が大好きなんです。
Art Of Noiseの「Moments In Love」なんてバージョン違いの12inchシングル何枚買ったやら。

ああ!だからSF歴史改変小説が好きなのか!(笑)

ありがとうございます! 書いた甲斐があります!

ヨーロッパの演劇とかオペラとかバレエとか、そもそも神話や歴史やギリシャ・ローマの古典をいじるのが基本でしたからねえ。シェイクスピアだって、パロディやパスティーシュを禁じられたら何もできなかったかもしれないですし。それをやってるうちにそこからオリジナルのすごいものが生まれ出てきたりするめわけで。やっぱり古典をいじるのは創作の上では大事なことだと思っておりますです。

>Art Of Noiseの「Moments In Love」なんてバージョン違いの12inchシングル何枚買ったやら。

ああっ、だから歴史改変小説書くのか、わしw

「小ねずみと童貞と復活した女」はここまでやっていただけると、痛快としか言いようがありません。

ありがとうございます! 林さんにそう言っていただけると書いた甲斐があるというものです! イタくて気持ちいい、っていうwww

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