『ミステリとしての『カラマーゾフの兄弟』』救出作戦
6月後半、「東洋書店が経営破綻して在庫もいきなり全処分」という連絡が井上のところに回ってくる。東洋書店はユーラシア・ブックレットをはじめとしてロシア関係のいい本を出してる出版社だったが、どうもギョーカイ内の話では、「司法試験の参考書とかそっちがダメになっちゃったらしい」とのこと。
話が出回ったとたん、ネット市場では東洋書店のロシア関係書籍がめっちゃ高騰。暗躍するせどり屋。寝耳に水の著者たち。出版社が破綻することは往々にしてあるものだが、読者側がこれほどパニクった例は珍しいと言う人もけっこういる。江戸の歴史地図などで知られる人文社が破綻した時もこれほどじゃなかった気が。それだけ東洋書店が必要とされていたということなのだ。
井上とは、これでわしらの著作も「過去のもの」になっちゃうねえと話していたのだが、ここへきて一条の光が。
私の『ミステリとしての『カラマーゾフの兄弟』 スメルジャコフは犯人か?』は、もしかしたら救出できるかもしれない。直接の関係者は協力的なのだが、オトナの事情、要するに「上の人」の許可をとらないといけないので、まだ確定ではないのだ。
いや~、でも東洋書店がこんなに危ういと知っていたら、『ミステリとしての……』はユーラシアブックレットでは出さなかったなあ。もうちょっと文章を増やして新書のお話に乗ったか、逆に減らして『カラマーゾフの妹』の文庫版のオマケにつけたのに。
電子出版もネット掲載も思いのままな今日、「世に出す」こと自体には全然意味がない。「信頼性の高い出版社から出す」ということの意義は昔より高まっている。だからこその東洋書店チョイスだったのに~。あの本もこの本もまだ買ってないのに高騰して手に入らなくなってしまった。一冊でも多く、他の書店さんが救出してくれることを祈る。
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固い書籍の出版社は色々と大変みたいですね。ダイエット本が当たって、その収益で学術書をだしていたら、ダイエット本部隊が膨張して、学術本部隊は隅に追いやられた……なんて話も耳にします。
投稿: 林譲治 | 2015年8月 1日 (土) 16時25分
まあそれでも学術書が出せてればええんでないかと。ただ、ダイエット本みたいな流行り廃りがハゲシイものに会社の命運がかかっちゃうと、流行からちょっと外れただけで一気に会社あぼーんみたいな事態が怖いですよね。
ちなみに、ユーラシアブックレットのレーベル自体は群像社が引き継ぐそうです。ただしバックナンバーは引き継がない(異形コレクションの前例と同じパターンね)。
何もかも群像社の島田さんに丸投げな感じで申し訳ない気がします……。読者としてはせめて買い支えたいですね。
投稿: ふみお | 2015年8月 1日 (土) 20時05分