ガガーリン 世界を変えた108分
去年の正月は、神田明神に行って『ゼロ・グラビティ』を見た。今年の正月は、神田明神に行って『ガガーリン』を見たw 近場の宇宙に行って、ちょっとムリヤリっぽく帰ってくる映画。何だこのループ感はw
『ガガーリン 世界を変えた108分』、まあオーソドックスな再現ドラマ&CG。愛と国家的任務と苦労話が報われる、典型的なソ連ドリームですね。
しかーし、ガガーリンが妻に贈った花の色まで家族に徹底取材をしたというわりに、取りこぼし感は否定できない。まず何と言っても、コロリョフは金歯じゃないとダメでしょう(コリョフは戦前に虚偽の告発でシベリアに流刑され、流刑地でほとんどの歯を失い、復職後にたくさん金歯を入れている)。これは「細部」じゃなくて史実の重大な見落とし。
ヴォストークがアンテナを伸ばすシーンがあまりにもCGすぎる。もうちょっとモノが動く時の引っ掛かりとか反動を反映させようよ。打ち上げシーンのCGなんかはずいぶんと細部に気を使っていただから、あなたはやればできる子よ。 そして、帰還した宇宙犬が、現代スタンダードの血統書つきっぽいジャック・ラッセルなのはいただけない。当時は確立してない(そしてほぼ英国圏限定ではなかったか)の犬種だし、ロシアの宇宙飛行犬はみんなそのへんからスカウトしてきた(狩ったともいうw)野良のワンコばかりだよん。まあ雑種のタレント犬が確保できなかったのかもしれないけど……さほど「演技」を必要とする役じゃないんだから、人間に慣れたペットを借りてきてちょっと撮影すればよかったのでは……
もっとも、コロリョフが金歯だったらこんな細部は許したと思うんだよね……
監督は基本的にはカメラマン出身のひとなので「映像には関心があっても、人の人生には興味ないかも」と井上は言うが、そうかもね。ガガーリンの場合、帰ってきてからのほうが大変だったんだけど、そんなことお構いなしで、成功だけ描いたらおしまいなのであった。 もっとも、どうも制作会社が事実上国策映画会社っぽいので、英雄として描写するしかなかったのかもしれないけど。ソ連時代を描いていながら、現代ロシア人のナショナリズムに訴えかける、けっこうみごとな国策映画と言えましょう。
おろしや国の末広がりのロケットも、四方に開く「チューリップ型」のランチャーも、すっかり見慣れてしまったw 今ISSに行く唯一の手段であるソユーズが当時のヴォストーク1とほぼ同じシステムだというのに愕然とせざるを得ない。 「地球は人類のゆりかごである。だが、そのゆりかごに人類が留まっていることはないだろう」とツィオルコフスキーは言ったが、もう40年もISS(地上約400キロ)より遠くに行ってないっすよ、ツィオルコフスキー先生(泣)。
観客は当時をリアルに知っているであろう年配者から、フルシチョフをニキータ・セルゲイエヴィチと呼ぶマニアックな青年たちまでで、世代的は幅広いが、雰囲気はヤマトの客層とほぼ同じw
ああ……来年は宇宙に行って帰ってくる以外の映画を見よう……。まさかスター・ウォーズのエピソード7は宇宙に行って帰ってくる映画じゃないだろうw
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