愛用の万年筆
「愛用の万年筆を教えてください」という質問を最近二度続けて受けたので、もしかしたらそのお二方しか関心なくて誰も聞いちゃいないかもしれないですが、それでもお構いなく勝手に万年筆について語るエントリw
私の世代は、中学や高校に進学したら「ちょっと大人っぽいお祝い」として好むと好まざるとに関わらず親か親戚が万年筆を贈ってくるのが当たり前の世代でした。が、大人が「女の子らしくてかわいい」と選んだものなんか当然気に入らないわけで、中のインクが見えるスケルトン軸とか、東京の有名文具店で見つけたシェーファーのノー・ナンセンスとかを使ってました。その後学部生の時、アンカレッジの免税店……って、若いもんは知らんじゃろ、冷戦時代はソ連の上を西側の旅客機はなかなか飛べなかったんで(いや戦闘機はなおさら飛べませんけどねw)、日本からヨーロッパに行く時はアラスカのアンカレッジ経由で飛んでおったのじゃ、げほがほごほ……で、そのアンカレッジの免税店で、80年代末にはまだ作られていたモンブランの廉価品を手に入れて、学部時代から20世紀中はそれを使っておりました。
が、原稿はデビュー時点ですでにワープロ執筆だったので、徐々に下書きも電子化し、手書きだと腱鞘炎っぽくなるので、継続的に使っていないとメンテしにくい万年筆はお蔵入りになったのでした。
で、話は飛んで5年くらい前、やっぱり構想と下書きを手書きで書きたくなり、友達に万年筆マニアがいたので、彼女の手引きで使用再開。……いやまあ、腱鞘炎になりましたけどね。
で、現在メイン使用なのがシェーファーのタルガ。タルガはかつて70年代半ばから90年代末まで製造されたモデルで、とにかく軸のヴァリエーションが100種越えたというシロモノ。時代が時代なだけにとにかく「実用品」で、一番スタンダードなのは金ニブに黒軸だけど、軸もニブもステンレスという実用一点張りなモデルさえあったほど。私は中高生の頃、このインレイド・ニブに憧れたのですが、さすがに田舎の高校生に3万円はハードルが高すぎ……orz 買えるようになった頃には日本ではあまり扱われなくなり、気がついたら廃番。そして今日に至るw
救世主はやはりインターネットとアメリカのネットオークションですよ。子供の頃買えなかったキングギドラのソフビ人形を大人が買うのパターンですね。ただタルガはレアもの未使用でも、海外じゃプレミアがついたりしない。あくまでも中古品の扱いなのですね。日本のあんなところとか、こんなところとかでは、ずい分ふっかけて売ってるようですが。
で、三年ちょっとねばって、イギリス向けに出荷したと思われるこのプレステージ・タルガ三種を確保しました。全て未使用。でもプレミアついてへん。あくまでデッドストック扱い。買う側としては嬉しいけど……その扱いが悲しくもあり。1989年のワンタイム・エディションで、手前から1040、1041、1043。「1042」って欠番なのか、把握されていないモデルがあるのか……気になりますが、欧米のオークションでは一度たりとも見たことないので、欠番と信じたい。手に入らないプレステージ・タルガがあったら悲しい……
真ん中の1041に学生時代から愛用してたモンブランの古典ブルー・ブラックを、1043にバーガンディを入れてメイン使用にしてます。わざわざドイツから個人輸入したドクター・ヤンセンのインクは、紙との相性が激しすぎて挫折。1040は実はニブの調子がイマイチなので予備役入り。
作家の万年筆と言うと、文豪はみんなオノトやモンブラン、ペリカンのような重厚系を使用するイメージで(乱歩の愛用もモンブラン)、アメリカのシェーファー、しかも大衆的なタルガを今さら使ってる作家なんか高野史緒くらいのものだと思いますが、でもやっぱりこのデルタ型のインレイド・ニブのカッコよさは何物にも代えがたい。タルガはやっぱりヘビーデューティで、書くことに集中している時に繊細な扱いなんかしなくていいのも嬉しい。とにかくタルガの好きさはハンパないw 今年の茨城大学の広報誌にも登場させましたw って、そうだった、この広報誌の紙版についても質問されてたんだった。紙版をご希望の方は茨城大学の広報室にご一報ください(koho-g@ml.ibaraki.ac.jp)。
実は乱歩賞の賞金でモンブランの「ドストエフスキー」も買ったんですが、これがね~、タルガのサイズが好きな私にはやっぱり太い。そして、この個体はちょっと書き出しがイマイチ。去年はイベントの時サインするのに使ったりしてましたが、失敗の許されない読者さん持参の本にサインの時に書き出しがイマイチとかどうしようもないので、今はインク抜いてすっかり飾り物。確か1997年のワンタイム・エディションですが、シリアルナンバーの分母が17000! こんなにたくさん作ったら限定品云わない!と今なら思うw 案の定、私が手に入れたのもデッドストック未使用品でした。ま、20世紀中でも17000本は作り過ぎだよね。リシュモン・グループの軍門に下ってからどんどん狂ってきてるモンブランですが、今年ついに永遠の定番かと思われた古典BBインクを廃番に! 呆れかえってものも言えない……。私は買いだめには走らないわ~。今使ってるボトルが尽きたらローラー&クライナーとかに乗り換えたるわ。アホか
その他にも何本か持ってますが、私はコレクター魂が無いということもあって、あんまり買わないですね(「買えない」とは言いたくないw)。まあそんなところでございましょうか。ピンポイント的にしかウケないエントリでしたが、そのスジの方々のご要望にはお答えできたでしょうか。
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