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2012年10月 1日 (月)

江戸川乱歩と『カラマーゾフの兄弟』と土浦

20120930
ご報告が遅くなって申し訳ありません。9月13日、無事、第58回江戸川乱歩賞贈呈式を終えました。業界のこともあれこれ知っている初々しさのカケラもない受賞者ながら、さすがに緊張しました。が、各方面からのご配慮をいただき(特に体力面w)、途中で救急車を呼ばれたりするようなこともなく任務遂行いたしました。前もっていろいろと秘密結社の入会儀式めいたお話を聞いてびびっておりましたが、どちらでもびっくりするほどアットホームかつカジュアルな感じで迎えていただき、ありがたいかぎりでした。結局、倒れるほど私を追いつめていたのは私の心配性ですか……。ザ・自業自得coldsweats01 笑ろうてる場合かsweat02 (写真は「小説現代」の口絵写真などでおなじみの但馬一憲さんによる撮影。左は言わずと知れた東野圭吾さん)

贈呈式のご挨拶では、「本作はそもそも乱歩賞に応募するために書きはじめたものではないが、東欧アンソロジーや震災などで今までに考えなかったようなことをいろいろと考えるようになり、550枚以下サイズに縮小して応募したこと。縮小することによってこの作品にとってもっとも重要なポイントは何かがはっきりしたので、この形にして良かったと思っていること」と、「数日前に郷原宏さんと日下三蔵さんに教えていただいて、乱歩と木々高太郎が戦後、探偵小説としての『カラマーゾフの兄弟』の可能性について論じていたことを知った。私の作品をこのお二方が認めて下さるかどうかは分からないけれど、少なくとも、これに挑戦する人間が出てきたことは喜んでいただけたのではないかと思う」ということ、そして、「実は選評が出た後日、今野敏さんが『あれはあくまで乱歩賞という場での判断であって、あなたの作品そのものを批判しているわけではないんですよ』というお手紙をいただき、それを読んだ瞬間、乱歩賞は設立当時から今日に至るまで、優れた方々が本当に心血を注いで変わってこられたのだと強く実感したこと」の三点をメインにお話しさせていただきました。あとで何人もの方から「落ち着いてたねえ」と言われましたが、これがとうが立ってるってやつですよ(笑)。人前に出るのはニガテと言いつつ、何だかんだ言って(主にSF大会でw)慣らされました(笑)。

で、上記の二点目、「乱歩と木々が『カラマーゾフの兄弟』について論じていた」の部分ですが、これは贈呈式の数日前に郷原宏さんが「潮」10月号に書いてくださった書評で初めて知ったのでした。つまり、今まで知らなかったんです……むしろそこを恥じるべきかとgawk で、慌てて日下三蔵さんに当該箇所を探していただいたら、『蘇る推理小説雑誌1 「ロック」傑作選』(ミステリー文学資料館編、光文社文庫、2002年)に所蔵されている「探偵小説随筆」がそれだということが判明。あっ、これ、いわゆる「探偵小説芸術論」と言われるものですね。そうか……知らなかった……知らなかったよ……orz お二方がどう論じているかは原文に当たっていただくとして、戦後すぐといったら日本におけるドストエフスキー研究は「これから」という時代にこういうことを考えていたの自体がもうスゴイわけで、我々日本人は誇りに思っていいんじゃないかと思います。

贈呈式前にご挨拶に伺った旧乱歩邸の土蔵には、米川正夫版のドストエフスキー全集をはじめとして、ドストエフスキー、たくさんありました。しかも書き込もあり。通り一遍読んだだけじゃないし、「心理試験」も、単なる思いつきじゃなかったことがよく分かります。いやあ、もう、ほんとにスゴイ。

で、お伺いした時に、乱歩のお孫さんである平井憲太郎さんから聞いたのですが、乱歩の一人息子、平井隆太郎の奥様、つまり憲太郎さんのお母様は、土浦の出身なのだそうです。隆太郎さんが戦時中に海軍将校として土浦海軍航空隊に赴任した時に知り合われたのだとか。てことはきっと、海軍将校の遊び場だった霞月楼にも行かれたでしょうねえ。私、乱歩賞の身内のお祝いは霞月楼でやったんですが。知らなかった……恐ろしいほど何も知りませんでした……

というわけで、いろいろ因縁めいた話が背景にあることが今さら発覚。だとしたらなおさら、乱歩賞の名を汚さないよう精進いたしますので、今までの読者さんも、初めて私の本を読んでくださった皆様も、見捨てずに見守っていただければ幸いです。

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コメント

改めて、おめでとうございます!
SFマガジンのインタビューも読みました〜。けれどもすずらん本屋堂は録り損ね、視聴できずorz

数日前に「月世界旅行」柄のTシャツを着て、そう言えばT-con2009でお会いした時「今それが出てくる小説を書いています」と教えて下さったのも、『カラマーゾフの妹』の話だったのだなあとしみじみ考えておりました。

とにかく、今回も目一杯楽しませていただきました。私はいい読者ではないかもしれませんが欲深なファンではありますので、次の作品にも目一杯期待してます。どうぞよろしくお願いします!

ありがとうございます~。ただでさえ遅筆なのに、近年どんどんセルフ没率が高くなってきちゃってますます低速化してて、「職業作家」としてはどうなのかと思われる部分もあるだろうとは思いますが、量はともかく、良いものが書けるよう努力してゆきます。

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