【震災関係】アメリカのチャリティ・アンソロジー「Tomo(友)」
現実の被害や経済的困難もさることながら、精神的な打撃が深刻なんですよねえ。私もあの日以来、着物を着て出かけられなくなっちゃったのであった。若いころから着慣れている人なら着物で被災してもなんとかなると思えるかもしれないけど、私のキモノライフはぶっちゃけシュミの付け焼刃なんで。インシュリンも一週間は生き延びられる量を持ってないと近所のスーパーにさえ行けなくなってしまった。まあ、それまでのミニマムな装備で出かけていたこと自体が間違いっちゃ間違いなんですが。東京にいてさえこうなんだから、被災地の人々の心労はいかばかりかと思います。まだ「終わった」わけでもないし……
この強烈にトラウマ的な出来事の後に心の支えになったことの一つに、海外からの支援やメッセージがあったのではないかと思います。私のところにも、アンソロジーの東欧編やロシア編で関わっている作家や編集者たちからたくさんメッセージをいただきました。生まれてこの方「地震」とか「津波」なんてものに一度も遭ったことはないであろう地域の方々からも、その想像のつかない状況を軽く見ることなく、本当に真摯で温かい言葉をいただきました。テレビで見る各国からの支援の様子とか、ハリウッド映画のようにカッコイイ米軍の「トモダチ作戦」とか、21億円の義捐金をたったの4時間で集めてくれた台湾の心とかが、実際の支援だけではなく、我々の心の栄養になったのではないかと思います。
そういう海外の人々の気持ちというのは今でも続いていて、今、アメリカでは来年に出版するチャリティ・アンソロジーが準備されているところ。これは日本在住歴の長い作家・大学講師のホリー・トンプソンさんが編者として立ち上げた企画で、アメリカ人と日本人が書いた日本をテーマとした短編を集めたヤング・アダルト向けのアンソロジーです。出版予定は東日本大震災からちょうど一年の2012年3月11日、出版社はカリフォルニアで日本関係の書籍を多く出版しているStone Bridge Pressです。タイトルは「友」Tomo: Friendship Through Fiction--An Anthology of Japan Teen Stories。収益は東北の子供たちを支援する団体に寄付されます。「友」についてのトンプソンさんのブログはこちら。「日本語」やSubmissionsのページは関係者向けの初期の作業用ページなので、本についての情報はトップページとContributorsのページのみです。
このお話をいただいたのは4月の半ばでした。少額の寄付や支援買いをするくらいしかできないことに苛立ちを感じ始めていた頃だったし、もう光の速さでお受けして、「アントンと清姫」を供出しました。翻訳者は長野県在住の翻訳家ハート・ララビー(M. Hart Larrabee IV)さん。ララビーさんは奇しくも20年前に西洋演劇を取り入れた新作能「新作道成寺」の翻訳もされている方で、本文中の長唄についてはこちらからは一切何の説明の要がなかったという奇跡のコラボ(ていうかもしかしたら道成寺についてはララビーさんのほうが詳しかったりするかもだよ)。
国際企画のアンソロジーがどれだけ大変かは、多分今は私が日本でもっともよおおおーーーーーーーく思い知らされてる人間なのでw、トンプソンさんがいかに大変な思いをしたのか分かります。ほんとに頭が下がります。作家はすでにある作品を提供するだけだけど、編者と翻訳者、コーディネーターは、ものすごくタイトな締切と戦いながらガチただ働きで夏を過ごしたのでした。「アントンと清姫」はちょっと量的に長すぎたので、ララビーさんとどこをどう削ってどう改造するかずいぶんメールのやり取りをしたのですが、カケラの手抜きもない、一瞬たりともやる気の揺るがない仕事ぶりで、いやあ、なんて言うか、癒されました。みんなこんなに日本のことを思ってくれてるんだと思うだけで、癒されるし明日への活力になります。
デッドラインまでにすべての訳稿が揃ったそうで、予定通りに出版できそうです。収録されている作家は、みな多彩なバックグラウンドを持った人たちで、チャリティということを抜きにしても、純粋に「本として」面白そうです。ううう、でも全部英語なのよね(<当たり前じゃ)。でもティーン向けなので、日本人でも読める人が多いんじゃないかと思います。
発売が近くなったらまた情報をupします。
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