フォト
2024年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

« ベラルーシ編はチェルノブイリもの、スロヴァキア編は原発ものです | トップページ | スティーヴ・ジョブズのアップロード完了 »

2011年10月 4日 (火)

ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ

タイトルを見て「おお!」と思う人と「?????」と思う人と、多分はっきりと分かれるんではないかと。少なくともニュートリノよりナゾの存在であることは確かでしょう。

10月2日、アキバに行ってきましたよ。お目当てはAKBならぬBKE、バッハ・カンタータ・アンサンブル。バッハの200曲近いカンタータの全曲演奏を目指して年2回の定期公演(1回の公演につき、基本的にカンタータ4曲)を行っているアマチュア団体。アマチュアと言ってもナメたらアカンの本気のバロック楽器も使用し、指揮者は古楽奏者・研究家の花井哲郎さん。今年は創立20周年で、春の定期ではロ短調ミサの全曲を演奏している。私もロ短調はやったことあるけど、大合唱+プロのモダンオケっていうのと、ごまかしのきかない少人数の声楽アンサンブルとバロック楽器入りの器楽アンサンブルとではどっちのレベルが高いかは一目瞭然。日本には古楽のアマチュア団体は意外とあちこちにありますが、その中でも群を抜いた存在であるようです。

で、先日の第32回定期で演奏された41番では、ナゾの古楽楽器、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラが登場。

ヴィオロンチェロ・ダ・スパラはイタリア語、直訳すると「肩の小さなチェロ」というあたりか。どういうものかというと……まあ、こんな感じです。

20111004

こちらは広報の小林直樹さんからお借りした写真。奏者は同団のヴァイオリン奏者、波田野正行さん。まあなんちうか、「肩の小さなチェロ」です 見たまんま(笑)。中世から19世紀前半までの長い間、楽器、特に弦楽器には現代的な意味での規格が無く、しかもヴァイオリン族でもヴィオール族でも、大きさも弦の数も様々な楽器が作られていたわけですが、それらのヴェイパーウェアの一つですね。五弦、この大きさ、この姿勢……ハンパなく弾きにくそう。そりゃ淘汰されますわな ヴィオラからチェロの間って、やっぱり人間工学的な限界がありますよね……

音は、大きさの割には響かない感じではあります。そもそもそういうものなのか、いかに研究したとはいえ当時の楽器の実物や現代的な意味でのデータがない以上は事実上製作者の創作であることによる限界なのか、グァルネリのような天才が作ったらなんかスゴイ音が出るのか、そのあたりはまだ不明。音色はやはりヴィオラに近いですが、渋さ抑え目でちょっとチェロ的な甘みのある音です。

制作者は日本とベルギーに工房を持つロシア人、ディミトリー・バディアロフさん。この方は日本の古楽関係者の間では、活動もお人柄などもいろいろな意味でよく知られているようです。ロシアは限りなく古楽不毛の地で、90年代に出てきたバロック系の演奏家はみんな西ヨーロッパに出ちゃったし、今はモスクワ音楽院のピアノ科で細々とチェンバロを弾いてる人がいるくらいだそうで、古楽楽器の制作なんて、それこそ日本かヨーロッパに拠点を置いてないとできないんでしょうね。

スパラはまだ世界に10台もないそうで、波田野さんも一番苦労するのは「イタリアに特注する弦の調達」だそうです。西ヨーロッパで古楽が盛んなのは当然としても、日本人って非ヨーロッパ圏では例外的なくらい古楽好きだよね……。私は日本人にはそもそも古楽って向いてると思ってますが。西ヨーロッパの外で古楽やるのはまだ大変かと思いますが、プロ、アマ問わず、奏者や楽器製作者の方々の活躍を期待しております。

バッハ・カンタータ・アンサンブルの次の定期は2012年5月13日。いつになねかは分かんないけど、これからもナゾの古楽器の登場の機会はあるようです。

« ベラルーシ編はチェルノブイリもの、スロヴァキア編は原発ものです | トップページ | スティーヴ・ジョブズのアップロード完了 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。