「どうせ実現しないだろう」と思われてる悪寒はしますが、東欧ファンタスチカ・アンソロジーの正式タイトルと出版日程が決まりましたので、お知らせいたします。そしてロシア編の予定についても少々。
東欧編のタイトルは『時間はだれも待ってくれない ―21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集―』、発売時期は九月後半です。言うまでもないですけど出版は東京創元社。「旧共産圏」としてではなく、近代に成立したゆるやかな「文化圏」としての東欧の、21世紀に書かれたSF、ファンタスチカを収録しました。収録国は十か国。全て英語やロシア語からの重訳はナシで、原語からの直接翻訳を実現。ベラルーシとラトヴィアについては、小説が原語から日本語へ重訳なしで翻訳されたのは史上初です。解説は大御所、沼野光義先生。
サブタイトルの「21世紀」というのは、自分でもちょっと気にしてるポイントです。もちろん21世紀は始まったばかりなので、本当はThe first decade of the 21st centuryとすべきところなのは分かっているのですが、いかんせん日本語にはそれに該当する言葉がないので、これはまあ……しょうがないかな、と。そこんところはまあ「しょうがないかな」という目で見ていただければ。
創元のパターンからすると、発売日は15日とか22日とか30日とかになるかと思われます。東京創元社のページはこちら。8月1日の時点では。まだページの場所が確保してあるだけという感じでなんにもないですが、情報は追々追加されるはずです。でも書影とかは出版ぎりぎりになるまで出ないかなあ。そこんところはわたしにもちょっとわかりません。
ロシア編については年内の刊行を予定しています。……でも正直、ロシア関係って、いつどんな意外なことが起こるか分からないので、今後どんなワケの分からないことが起こらないとも限りません。ロシア関係の仕事って、「どんなに事態がカオスになっても、最後には何故か帳尻が合っている」と言われるので……帳尻が合うことを祈っててください。もうすでにワケの分からない事件は何度もあって、それでも何故かどこかからナゾ助けがやってきたりして、まあ、結果としてはこっちのほうがよかったじゃん、みたいなことは起こってます。結果が良ければそれでいいっちゃいいんですが、やるほうはもうヘトヘトです。井上には翻訳等はしてもらいますが、作品の選定とか現地との交渉とかは全くノータッチなので、ひとりでロシアに行っちゃった時みたいな心細さ。とりあえずこれ以上ワケの分からない冒険になりませんように。
ところで、ウィキペディアの記述によって誤解してる人がたくさんいるようなので、ここでちょっと一言。私は井上と結婚したことでロシアに傾倒しはじめたわけではありません。それはむしろ逆で、井上と私はロシアつながりで知り合って結婚したのです。
私が初めてソ連に行ったのは1985年、まだ十代の頃でした。『ヴァスラフ』や『赤い星』、「アントンと清姫」等は、『ムジカ・マキーナ』とかが影も形もないあの十代の頃から持っていたプロットです。確かに井上と結婚したことで、ロシア関係の活動は自作の小説だけに留まらなくなったというのは事実ですが、ウィキペディアに書いてあるみたいに、井上と結婚してからロシアに傾倒したというのは事実無根です。
ことに若い世代に知っていただきたいのは、今すぐ結果が出ないことでも、10年、20年という単位で積み重ねをしてゆくことで成果が出ることもあるのだ、ということ。かつて深見弾さんのソ連・東欧アンソロジーを遠いところから見ていただけだった田舎の中学生も、深見さんの偉業には及ばないとはいえ、地味な積み重ねでそれなりの貢献ができることもあるのです。こういう泥臭いのは美味しいところが取れる役回りではないけど、それを承知で誰かがやらないと。
ロシア編も終わったら、本当は西欧編とか、別なくくりでのヨーロッパ&ロシアのファンタスチカ・アンソロジーとかも考えてますが、ちょっと数年休ませてください。何しろ自分の作品が全然書けないんで。
今後もどんな想定外の波乱があっても不思議でないロシア編はいまだ不透明なところがありますが、東欧編は逆に、よほどの想定外な事態(最大余震が首都直下型地震だったりとか)が起こらない限り9月に出ますので、どうかよろしくお願いいたします。
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