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2010年11月 3日 (水)

『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』

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ゾラン・ジヴコヴィチさん(名前の表記法については後述)と黒田藩プレスのエドワード・リプセットさんから、『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』をいただきました。

旧ユーゴスラビア・ベオグラード出身の現代作家。実は今私が作っている『新東欧SF傑作集(仮)』のセルビア代表もこの人。作品を選定している段階では黒田藩プレスで短編集の計画があることは知らなくて、こちらの企画とは全然関係なく選んだので、どちらがどちらに便乗したとか、そういうことではないです。

黒田藩プレスの短編集に収録されているのは、「ティーショップ」、「火事」 、「換気口」の三篇。翻訳者は山田順子さん、つまり、セルビア語から直接の翻訳ではなく、英語からの重訳。どの作品もまさに「不思議な物語」。飾り立てない文章で、読者に対して強く何かを主張してくるわけでもないけれど、読後には多くのものを残す。でも多分、「これはきっと○○の象徴だろう」とか、「この世界の設定はこうだ」とかいう読みをする人は、かえって足元をすくわれるかも。

ただ、イラストでネタバレがあるのが惜しい。作った側は自分のセンスを見せた!と自慢に思ってるかもしれないけど、作品のためにはマイナスでしかない。こういうのはホントにやっちゃいけないことだと思う。私が作者ならマジギレる。

私の企画が進んできた頃にリプセットさんからこの短編集のことを聞き、作品のチョイスが重ならないよう、ジヴコヴィチさん本人と翻訳者の山崎信一さん、アドヴァイザーの奥彩子さん、私の四人でいろいろ相談して、うちんとこの収録作を決めました。黒田藩プレス版の三作もいいけど、うちの選定にも自信あるよ。ふふん。それに何しろうちは「史上初、セルビア語からの直接翻訳」ですんで。もっとも、ジウコヴィチのように凝りすぎない文体で語るタイプの作家の場合、ヨーロッパ語からの重訳ならば、さほど大きな問題はないかと思いますが(これがブルーノ・シュルツとかロブ=グリエとかだったら誤訳の嵐になったかもしれないけど)。

で、「ジフコヴィッチ」or「ジヴコヴィチ」の表記問題ですが。

セルビア語での綴りは「Zoran Živković」。リプセットさんは、ジヴコヴィチさん本人に発音してもらった音声ファイルを複数の日本人に聞いてもらった結果、「ジフコヴィッチ」と聞えるということでこの表記を採用したとのこと。私もこの音声ファイルもらったけど……うぐぐう、悩ましい。確かに、日本人的な耳ではそう聞こえるというか……ひとつ目の「v」は「う」に「゛」の点が一個、くらいの感じ。もともとスラヴ語の「v(в)」については、日本語で表記する時異同があるし(イワンorイヴァン等)、前後の関係で発音が変わることがある。なので、「Živković」についても、「ジフコヴィッチ」という表記は確かに存在する。しかし(以下、多少訂正します)vの発音は無声化はしないものだそうで、「撥音も旧ユーゴ関係は省くという方向性で統一されており、来年発売予定の岩波世界人名事典の原稿も、旧ユーゴ関係は撥音を抜くほうで統一されているだろう」とのこと。

私ももともと、「ショスタコーヴィッチ」ではなく「ショスタコーヴィチ」と書くというように、撥音は抜く方法で表記しているので(『マルコヴィッチの穴』のように、作品タイトルとして統一されているものはその表記に従う。あとは時々、シチュエーションによって日和ることもないではないですすみません)、撥音は抜くの方向性に統一するのはむしろ望ましい。

セルビア語・セルビア文学関係の人たちは、もともと、作曲家や軍人のŽivkovićさんたちは「ジヴコヴィチ」と表記している。というわけで、私のアンソロジーのほうでは、やはり「ジヴコヴィチ」表記を採用することにしたわけです。

もちろん、ネット検索や書籍のデータベースのことを考えたら統一したほうがいいのは当然だけど、どうせ統一するのだったら、そりゃ言語学的に正確で、かつ検索上も有利な「ジヴコヴィチ」表記でしょう。ああ……リプセットさん、どうせならもっと早く相談してくれればよかったのに……orz ていうか、もっともっと前に言ってくれれば、セルビア語の文学翻訳ができる人を紹介できたのに。英語からの重訳なんかしないで済んだのに。返す返すも惜しい話であります。

『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』の購入はこちらから。ISBNコードは取得しているものの、東販とかの流通に乗せていない手売り状態なので、Amazonとかで手に入らないのがちょっとツライところ。しかし、こういう本を作ってくれる出版社にこそちゃんと利益が出るべきだと思うので、どうかみなさん買ってください。

追記(11月25日):Amazon.comから買えるようになりました! 英語版はもともとAmazon.comで買えます。でも日本から買うなら黒田藩プレスから直接買うのが一番早くてラクです。

恥ずかしながら、ジヴコヴィッチさんから英語版の著書を送ってもらって初めてその出版社も黒田藩プレスであることを知った次第。ほんとに、こういう出版社にはちゃんとその仕事に見合った収益があるべきだと思うことです。

私の方のアンソロジーはまだちょっとかかりそうです。ええ。、ご想像通り、事務処理が異様に遅い国というのが存在するので ……どことは言わないけど。言わないけどさ~ どうりでこの手のアンソロジー作る人がいないはずだよ…… 

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コメント


情報がまだ不完全ですが、やっとアマゾンから買えるようになりました。
http://www.kurodahan.com/mt/j/catalog/rs0001catj.html
税込みで840円で、送料別です。

おめでとうございま~す エントリに追記しました! 日本で買うのはやはり黒田藩プレスから買うのが一番でしょう。「この内容でこの値段って、この人、儲ける気あるの?! 大丈夫なの?」ってみんな心配してますよ…… みんな、心配するんだったら買ってね(笑)。

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