The 4th kind
お正月映画は数あれど、『アバター』でも釣りバカでもなく、いきなり『フォース・カインド』(←このサイト、けっこうびびるのでクリック注意)から始めるワタシ(笑)。いちいち見た映画とかコンサートとかのレビューは書かない人だけど、これだけは書くワタシ(笑)。
60年代以降FBIによる訪問が2000回を超えるというアラスカ州北部の町、ノーム。2000年10月、ノーム在住の心理学者アビゲイル・タイラー博士のもとに、不眠症を訴える住民が次々に訪れる。不審に思ったタイラー博士は、催眠療法で彼らが眠れない理由を解明しようとした。博士は不眠を訴える患者たちが共通の夢らしきものを見ていると気づく。さらに催眠療法を試した患者たちが異常行動を見せるようになっていく。治療の過程を捕らえたカメラには、これまで誰も目にしたことのない現象が記録されていた。(映画解説より)
ネタばらししてない『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいなもんかと思ってわりと気軽に見に行っちゃったけど、実際見るとかなりビビります。催眠治療中の記録影像と称するものと、ミラ・ジョヴォヴィッチを始めとする俳優による再現影像を同時に映したりする手法を取ることによって、その「記録影像」のホンモノっぽさを際立たせるような仕組み。確かに、その記録影像を称するものの持つ何とも言えない生々しい雰囲気は異様なほど。もっとも、イマドキどんな影像でも作れちゃうしなあ、と思わんでもないけど(井上はこの立場のようだ)。
意外に思われるけど、実は私はいわゆるビリーヴァーではない。事件とか事故とかの話はダイレクトにリアルさを感じるし、幽霊とか呪いとかの話も、まだ「こっち側」の感じがする。でもアブダクション関係にはどうしても超えられない壁を感じるのよねえ。体験者の大半は、パンフで越智啓太が書いていたような「自分を特別視したい思い込み」型だろうと思っている。けれど、実際に「何か」が起こっちゃってる人がいるとも思っている。しかしそれは、どちらかというとユング心理学が扱う領域の問題じゃないかというのが私の立場。
この映画に「本人」として出てくるアビゲイル・タイラー博士というのが、もう、これほど憔悴しちゃった人というのは見たことがない、というくらい、異様な雰囲気の人物。強烈に「ヤヴァイ領域に達しちゃった内向直感型」のオーラを出しまくっている。これ自体オカルトな考え方だと言われたら否定しないけど、強烈なパワーを持っている内向直感型の人って、他人の心理を巻き込んで「何か」を起こし得ると私は思っている。影像を乱したり、ラップ現象を起こしたりという程度の力だったら、ナニ型の人でもわりと誰にでもあるんじゃないかなあ。きっかけがあったら発動するだろうし、なかったら一生何も起こさないかもしれないけど。心理的に誰かの強烈な影響下で、自分の首周りの筋力で頚骨を折ることも可能かと(心理状態云々とは別な話ですが、骨密度は二十歳並みの四十代の人で、咳をしてて自分の肋骨折っちゃった人知ってますです)。なので、この「記録映像」が本物だとしたら、タイラー博士本人が引き起こした現象で、UFO研究家とかより、ユング派の後継者たちが扱う問題じゃないかなあ、と私は思っている。
でももう一つ捨てきれない考えが。あと十年くらいしたらオスンサミン監督が「あの『記録映像』は少数のスタッフで作ったフェイクで、ミラ・ジョヴォヴィッチを始めとした出演俳優の全てと大半のスタッフはそれを知らされておらず、本物と信じてこの映画を作った」とか言い出したりして。一番有名なネッシーの写真みたいに……
映画そのものとは別なところで気になったのは、「Dr. Abagail Tylerを検索しても情報が出てこないからフェイク」と言っている人がびっくりするくらい多いこと。10年近く前に活動をやめた田舎の心理療法家の情報がネットにあるのが当たり前と思ってるのね、みんな……。今現在活動している療法家の情報もネットに無いことも珍しくないのに。どのジャンルに限らず、まともな経歴があってまともに活動している人の情報がネットにないことはそう珍しいことではない(追記:うちの実家を作った工務店、21世紀になってから廃業したけど、もう検索では跡形もないです。ずいぶん手広く商売してて、地元の人は今でも知ってるけど、ネット上では存在しない)。
「たとえ田舎とはいえ、拳銃で無理心中するような事件があったら世界に広まってるはず」というのも何だかなー。つい数年前、実家と同じ市内であった少年による一家虐殺事件だって、世界に向かっては全然配信されなかったけど……。子供の失踪事件だって、全世界で起こりまくってるけど、報道に出ないことのほうが多い。「ネットに存在しないものはウソ」みたいな人たちが増えてきてるってことか。情報過多のようでありながら、なんであんなに重大なことを誰も知らないんだろう、という体験はわりとみんなしてると思うけど……
それにしてもミラ・ジョヴォヴィッチはいい役者だ。『ジャンヌ・ダルク』の時に見せた、普通の時の普通っぽさと、戦場で「何か憑いてる」雰囲気と、牢獄で幻と対決する時の怯えた様子……。大げさな演技じゃないだけにあの表現力はすごいと思ってたけど、『フォース・カインド』でもそれは発揮されている。最初の催眠セッションから醒めた時の何も見ていない目つき、自宅の居間やキッチンにいる時の普通っぽさ、パニックに陥った時のかすれた震え声等々、やっぱりすごい。『バイオハザード』でアクション映画のイメージがついちゃったのが惜しい。でもその彼女の演技力をもってしても、あの「記録映像」の何ともいえないオーラはかもし出せない。
しかし、映画館はガラガラ、ネットの感想も総じて嘲笑的(アメリカでも)、関連図書も出ていない(学研にさえ無視されるとは!)、この「記録映像」がインチキかどうか検証しようとする番組もない……っていうのに時代を感じる。70年代だったらすごい大ブームになってただろうし、少なくとも80年代だったら、プライムタイムの番組が矢追純一をノームに派遣してただろうけど……。←こういう番組あったら見たいよう。
今年最後のエントリがこんなネタ(笑)。まあ来年もたいして変わらないと思いますが。てなわけで、皆様、よいお年をお迎えください。
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