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2009年7月 9日 (木)

【SF大会 2009】T-con 2009

というわけで7月4日、5日は那須塩原のホテルニュー塩原で行われたT-conに行ってまいりました。

4日の午前中、まず井上徹と新宿のホテルに向かう。テラ・ファンタスチカ社のヤナ・アシマリナさんをピックアップするため。前日に日本についたばかりのヤナさんは……ううむ、少なくとも私よりは元気そうだ(笑)。去年4月にペテルブルクで会って以来だけど、変わりはない様子。JRの高速バスで那須塩原に向かう。

昼過ぎにホテルに着くと、もうすでにかなり人が集まっている。ちょうど到着した巽孝之・小谷真理夫妻からシールをもらって初めて気がつく。……今年もまたシール作ってないよ……orz 海より深く反省。すんません来年はちゃんとします……

蕎麦を食べに行き、ホテルの近くにあった足湯「湯っ歩の里」に行く。ここ、日本最大「級」の足湯施設ですってよ奥様。もしかしたらこれ以上の足湯があるかもしれないので「級」なんだろうけど、どう考えても他にこんな壮大な足湯ないと思う(笑)。

T1 星雲賞の授賞式を見物し(どうせ賞とは縁無いですから、私は)、加藤直之さんがライヴで描いている等身大グインを見に行く。タイガーマスクかと思った(笑)。

加藤さんはライヴで描くというのが気に入ったそうで、来年も東京のSF大会で何かやるそうです。

ちなみにこのグインはのちほど抽選でプレゼントされたのですが、持って帰るのも保管するのも大変そうだ でもファンにとってはその大変さを押し切る価値はありすぎるほどあるでしょう。

それからパーティ。さすがにほぼ全員来ただけあってすごい人数。ステージ上ではマグロの解体ショーも! 全員に行き渡ったかどうか分からないけど、私もちょびっとだけいただきました。

あとは自分が出る企画三昧。もう、他のこと考えてる余裕は皆無です……

T2 まずは「日本SFはいかに輸出されるか」。出演は小浜徹也、大森望、日暮雅通、島田洋一、塩澤快浩、ヤナ・アシマリナ、井上徹、高野史緒。司会の小浜は「これはものすごくレベルの高いシンポジウムになる」と予言した通り、かなり濃い内容となりました。少なくとも私は、コンエヴェンションでこんなに(自分にとって)すごいシンポジウムは見たことがない。

まず日本→ロシアの場合。もう、とにかく文学作品翻訳レベルの翻訳者が少ない。数年前、国際交流基金がお金出して短編集出した時も、特に文学に関心があるわけではない翻訳者をエージェントが見繕ってとにかく速く翻訳させたというのが実情(しかもその翻訳書は、どうやらほぼ全て大学図書館とかに収蔵されて終わりだったんじゃないかという話はあちこちから聞くし……)。『赤い星』の翻訳者を探す過程で沼野充義さんに「だれかいい翻訳者いないですか?」と聞いた時も、この時の翻訳者たちは紹介してくれなかったのよね。理由は「お薦めしないから」。チハルチシヴィリやコワレーニンのような日本文学翻訳の大物も、もっとお金になる仕事を手にすると翻訳やめちゃうし、まだ文学翻訳者として実績のない人間が「ムラカミ作品の翻訳者は(自分に提示された額の)2.5倍はもらってるのに」とか言い出すし。日本だったら、「翻訳以上にお金になる仕事ゲット=これで経済的な心しないで翻訳ができる」と考える人優秀な翻訳者が多いんだけどねえ。正直、そういうところがロシアのダメなところではありますね。ま、これがロシアの場合の現状ですorz けっこうとほほです。

日本で直木賞を取ったような作品をアメリカ、ヨーロッパに売り込めば売れないことはないそうです。ただ、日本側で相手国語のレジュメを用意し、渡航して「行商」して翻訳者探して……とかやってると、労力が大きすぎて、出版社側は「二度とやりたくない」と言うそうですが……。それで結局、そういう試みは頓挫してしまうそうで。

「日本のSFをアメリカで出版する」という趣旨で始められたHaikasoruの場合。私は最初、このレーベルのラインナップを見て、何をやろうとしているのか全く分からなかったし、実は今でもよく分からないですが……。だいたいにおいて「ラノベのレーベル」という解釈が正しいのかと思いきや、塩澤さんはあくまでも「ラノベのレーベルではない」と言う。しかし話を聞いていると、アメリカ側から「量が少なくて分かりやすい作品」を要求されているのだそうです。英米翻訳の諸氏は、結局、アメリカ人はてめえ基準であっさり理解できるものをちょこっと読みたいだけで、本当に日本SFの奥深いところを理解したいわけじゃないじゃんこれだからヤンキーは……という話に。ううむ。一番華々しくやってるところもこうなのか……。

いずれにしても「あっち側」に輸出するとなると、わりと安易に「書き換え」をされてしまうという話も。日本の翻訳者たちの優秀さと勤勉さを改めて思う……。読者としての我々日本人は恵まれていると言えましょう。しかし、翻訳される側としてはとほほなことに

質疑の際に野阿梓さんから「そんなふうに書き換えがされるくらいだったら、オレは翻訳されなくて結構、と思う」との意見が。まあ分からなくもないけど……。しかし、自分自身でヨソの言語で文章書く時、日本語だったらゼッタイやらないよなあ、というような順序で話を進めて、日本語だったらゼッタイやらないよなあ、というような表現を使ったりするじゃないですか。前もって日本語の文章を用意してそれを自分で翻訳、なんてできない。「その言語」固有の方針に従わないとかえって難しくないですか? それ考えると、同じ事を表現するのでも、言語によって適したやり方を追求するのは当然かもしれない、と私は考える。もっとも、作者のあずかり知らぬところで大幅に改編されたら私もやっぱりイヤだ。ましてや結末変えられたりするのはさすがにナシ。

ま、いずれにしても、私が書くヨソの言語の文章なんて、「カメロイド文部省」状態だろうけど(笑)。

レベルが高いのはいいけど、けっこうヤルキを無くすシンポジウムでした……

続く「サイバーパンクの部屋」と「ロシアSFは日本の夢を見るか?」は、これほど書くことはないんですが……続きはまたのちほど。

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