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2009年5月24日 (日)

忘れえぬロシア@Bunkamura

Mainvisual 以前、「青春のロシア・アヴァンギャルド展」と「国立ロシア美術館展」について文句を垂れましたが、また文句垂れます。しかも、今回に比べれば前二者はまだマシだった、という悲しいお話。

Bunkamuraの「忘れえぬロシア 国立トレチャコフ美術館展」見に行ってきました。まあ、目玉商品であるクラムスコイの「忘れえぬ女」にかけたこのタイトルは悪くないです(井上はこれも気に入らないらしいけど)。しかし、「リアリズムから印象主義へ」というテーマが微妙。しかし、このテーマでも他にやりようはあったと思うけど……作品のセレクションが「国立ロシア美術館展」をはるかに下回るレベルでしたorz

19世紀初頭までの「西欧の真似事」を脱してからのロシア絵画の最大の見どころは、ストーリー性のある群像劇と、イコンではない宗教画に現われる独特の美意識と、雑誌「芸術世界」周辺から現われた美術と、ロシア・アヴァンギャルドの四点が最大のものでしょう。これ自体に異論がある人はいないのではないかと。で、今回の展覧会は、「あえてそれを避けて、一番『何だかな~』という側面だけを見せようとした」としか言いようのないセレクションなわけですよ。

目玉商品が「忘れえぬ女」であるところはいいとしても、展示品の三分の一以上はすでにこの十数年の間に日本に持ってきたもの。そしてほぼ全ての作品がどれも「ひと目で何が描かれているか分かる」肖像画と風景画。しかも……なんであえてロシアの印象派に焦点を当てようと思ったのかなあ。正直、19世紀ロシア絵画の一番とほほな側面が印象派なんだけどなあ。もろにフランスの後追い、とうてい成功したとは言えない亜流なので。

確かに、ロシア的な群像画はそれなりに説明がないと分かりにくいことが多いし、宗教行事の絡む場面などはよけいに解説が面倒になる。いい解説がついていても分かってもらえないこともある。だから展示する側が「やめとこうかな……」というキモチになるのも分からないでもないのよ。でも、だからといって、群像画をなかったもののように扱ってまで肖像画と風景画一辺倒にしてどうするのか。一番おいしい部分を「これは通好みの人にしか分からない美味しさだから」といって供さない行為。これで果たして、わざわざガイコクから莫大なお金をかけて作品を貸してもらって展覧会やる意味があるのか。

「ロシア絵画を紹介する」という意味においては、トレチャコフ美術館自体に弱点もある。つまり、「芸術世界」関係の画家の作品、ロシア・アヴァンギャルド関係の収蔵品がないという点(だからこそ、それらの収蔵品を持っている国立ロシア美術館の展覧会でちゃんとそれを展示して欲しかったのですけどね)。しかし、1990年に笠間の日動美術館でやった「19世紀ロシア絵画展」と、1993年に東京都美術館でやった「ロシア近代絵画の至宝展」は、前者は9割方が、後者は全作品がトレチャコフの収蔵品だったんだけど、文学性のある群像画、ロシアならではの風景が描かれた風景画(特に建築物が描かれている絵は見どころ)、西欧とはちょっと違う色彩感覚、歴史や宗教がテーマの独特な雰囲気がよく紹介されていて、今考えてもあれはすごかったと思う。トレチャコフの収蔵品だけでも、これだけやりようはあるのですよね。実際やったんだし。そして、どちらも油彩だけではなく素描や水彩画もあったのに、今回はそれも無し。いったいどうなってるんだ。

有名で市場的価値が高い作品は保険料とかの関係もあってそうそう持ってこられないのは分かる。しかし、そうであるからこそ、日本じゃまだ有名でない「隠れたいいもの」を安い保険料で借りてくるチャンスでもあるんだけどねえ。これを目当てに客が来るだろう、という目玉商品は4、5点あれば充分で、何度も何度も同じ作品ばかり持ってくる必要がどこにあるのか。

もちろん、貸し出すロシア側にも、企画を持ちかける日本側にも、両方問題はあるでしょう。作品のセレクトの主導権がどちらにあったとしても、いずれにしてもルーチンワークで企画した展覧会としか思えない。「どーせ日本の一般大衆にはわかんないでしょー。分かりやすいところだけ見せときゃいいかー」という本音が透けて見える。トレチャコフの収蔵品が泣きますぜ、これじゃ。

今回の展覧会、結果として、ロシア美術に前知識のない鑑賞者に「個々の作家に才能はあるんだろうけど、所詮、ロシアの絵画なんておフランスの後追い。後進国だからしょうがないかな」という印象を与えて終わっちゃう危険性があるところが怖い。ああっ……なんでわざわざ「ロシアの印象派」なんていうくくりでまとめて持ってくるかなあ……gawk よりによって……何故そこ……orz

というわけで、個々の作品は良いものなのですが、こういう「くくり」だとダメになるという、とっても悲しいお話でした。ロシアも日本も、学芸員力が落ちているのか。

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ロシア・ソ連」カテゴリの記事

コメント

この展覧会,10月には我が街の美術館に巡回してくるのですが,僕が見に行っても面白くないでしょうか? 「忘れえぬ女」が見れればよし,という感じですかねえ.

それぞれの作品はよいので、一見の価値はありますです。何にしても、モスクワに行く労力を考えたら、そら地元で見ちゃったほうがおトクですがな(笑)。

た~だ~、ホントに「単に肖像画」、「単に風景画」が並ぶ、という印象にはなっちゃうので、一点一点への評価も辛くなりがちです。「そういう展覧会」と承知の上で見に行ってくらさいsweat01

見どころとしては、「忘れえぬ女」と、日本初公開になるレーピンの何点か、ワタシ的好みとしてはクインジの風景画あたりです。クインジはベックリーンっぽいけどもっと「作りもの」っぽくない風景画。今回来たレーピンの中では特に「国家評議員、イワン・ゴレムイキンとニコライ・ゲラルドの肖像」と「画家レーピンの息子、ユーリーの肖像」が良いです。レーピンの筆って、晩年のレンブラントのそれに似てないですか? なんであんななすりつけたような絵の具であのリアルな質感や描かれたモデルの人格や存在感が表現できるのか分からん……。人間業じゃないです。

ありがとうございましたm(_ _)m こちらに来たら,とくと拝見してきます.

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