2月21日土曜日、私の大好きなハダカデバネズミさんがジュンク堂池袋店でべつやくれいについて語るというので……じゃなくて、べつやくれいさんがハダカデバネズミについて語るというので、「座って話を聞くだけなら大丈夫だよね?」と、よれよれの体調をごまかして池袋に行ってきました。「ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係」吉田重人、岡ノ谷一夫(共著) べつやくれい(イラスト) (岩波科学ライブラリー、2008)という本関係のトークイベントでございます。
ハダカデバネズミという生物の存在は、「なんかテレビで見たことがある。生態はまだよく分かっていません、という結論だった気がする」という程度にしか認識してなかったけど、べつやくれいさんがデイリーポータルZで何度か取り上げたのを機に、私の中で人気急上昇。とにかくまず見た目のインパクトがスゴイ。何しろハダカでデバでネズミだ。肉球でもなければもふもふでもない。べつやくさんがデイリーポータルZに載せた最新のハダカデバネズミ記事の写真はこんなだ。ううむスゴイ。ハンパではない。
で、岩波ライブラリーの出版を機に、今回、ハダカデバネズミ研究の第一人者、岡ノ谷さんと、本のイラストを描いたべつやくさんがハダカデバネズミについて熱く語るというマニアックなイベント、「ハダカデバネズミに魅せられて」が実現したという次第。となると、これは行かねばなるまいて。
この時点で私はまだ本を手に入れていなかったので(というか、当日買ってサインを入れてもらおうという魂胆だったので)、実はハダカデバネズミの生態については何も知らない状態だった(なんかネットでハンパに調べちゃうのもイヤだったしさー)。だもんで、まず前半に「そもそもハダカデバネズミとは何か」について語った岡ノ谷さんの話が衝撃だった。奴らは見た目にインパクトがあるだけではないのだ。哺乳類のくせに自分で体温調節ができず、群れで「真社会性社会」を形成しているのだという。真社会性社会……つまりアレです、女王のみが選ばれた少数のオスと交尾して子供を産み、生殖しない兵隊とワーカーが巣を維持するという、アレ。もちろんこの形態では近親交配が進み、遺伝子は均質化してくる。だから感染症とかが入るとコロニーは一発でイチコロだが、どいつも遺伝子がほぼ同じなので、捕食者に兵隊やワーカーが多少食われても、「遺伝子を維持する」という意味では屁でもない。スゲー! それってアリじゃん! それってハチじゃん! 君ら哺乳類だよね?! とにかく、これは今年聞いた最もビックリする話であった。今年って言ったって、まだ2月ですがw
しかも奴らは17種類の鳴き声を駆使して通信しているのだという。これは学習して体得するものではなく、先天的に備わっているものらしい。音声で通信かあ。でも、そりゃそうでしょうねえ。地中のトンネルじゃ何も見えないもんね。
後半はべつやくさんがデイリーポータルZに書いた記事のこととか、岡ノ谷さんたちの研究チームがデバたちを飼育し始めた時の話とか、会場からの質疑とか。みんな熱くデバのことを質問しまくりました。デバ自体も面白いのだが、私は岡ノ谷さんの「動物の鳴き声とヒトの言語の起源について」の研究自体にも興味あるなあ。これの話も聞けるチャンスがあるといいなあ。
デイリーポータルZでは何とも言えない独特の味のイラストエッセイを描き、ぬるいびみょ~な歌やびみょ~なネタの動画を披露しているべつやくさんだが、こういう場では意外にもフツウに見えました(<いろんな意味で賞賛してます。そう聞こえなかったら気のせいです)。岡ノ谷さんは「古楽演奏が趣味」「間取り図が大好き」「瀬名秀明さんと知り合い」等、いろいろと私と共通する項目が次から次へと判明して、ちょっとドキドキしました。岡ノ谷さんは『サイエンス・イマジネーション』にも寄稿しておられるそうで……あっ本当だ! たいへん失礼いたしました。
帰りに本に岡ノ谷さんと吉田さんとべつやくさんのサインを入れてもらう。わーい うちに帰ってオットに自慢したら、いろんな意味で反応に困ったようであった。
早く上野動物園に行ってナマデバを見なければ!
私はもともと「有性生殖の起源と意義」についてすごく興味があるので、デバの話はものすごく面白かったです。というわけ……では全然なく、今回の件とは関係ないんですけど、明日発売のSFマガジンに、生物学に領空侵犯した短編「ひな菊」を書きました。もう何年も前に一度プロトタイプを書いてお蔵入りにしていたものなので、『おくりびと』とも関係ないのですが、たまたまチェロ奏者が主人公です。よかったら読んでやってくださいませ。
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