シベリア横断ウルトラクイズ出発ならず
北方領土に人道支援物資を届けようとした日本の訪問団が、ロシア当局から出入国カードの記入を求められ、支援を中止した問題で、河村官房長官は29日午前の記者会見で、「理解できない。ロシア側に対して、(カード提出要求の)撤回と同時に、人道支援ができるよう強く求めている」と述べ、ロシアの対応を批判した。(中略)
一方で、「ロシア側の意図が明確でない」との戸惑いもある。メドベージェフ大統領が24日、麻生首相に2月中旬にサハリンで首脳会談を行うことを提案。領土問題解決に前向きと取れる発言をしていたからだ。政府内では、「ロシア側が領土問題を非常に意識している表れ。トップ同士が前向きな発言をしても、現場レベルではそう簡単には行かないというアピールではないか」(首相周辺)との見方がある。
(2009年1月29日14時16分 読売新聞)
【モスクワ=瀬口利一】北方領土に人道支援物資を届けようとした日本の訪問団が、ロシア当局から出入国カードの記入を求められ、支援を中止した問題で、ロシア外務省は28日、声明を発表し、「問題を政治化しようとする非生産的な試み」と、領土主権を理由に記入を拒否した日本側の対応を批判した。「政治的な理由で人道支援を中止するのなら、支援の真の狙いは何だったのかとの疑問が生じる」とも主張した。
(2009年1月29日14時18分 読売新聞)
「(島の国境警備隊レベルの)現場の勇み足であって、大統領・閣僚レベルからはお叱りが来るのでは」なんていうお気楽な日記を書いてる人がいてビックリ 当然だけどこういう続報が出ましたね。
そもそも、大統領、首相が「解決に前向き」というのを「返還の可能性」と受け取ること自体が甘い。そもそもロシアは今の事態が全く変わらなくても損はしない。領土問題が未解決だろうと、平和条約がなかろうと、経済交流は年々進んでて(日露貿易の規模は昨年で3兆円で、2月からのサハリンLNG輸入が始まれば、中露貿易4兆円を超えて首位に!)、ロシア的には正直、ここさえ押さえておけば平和条約とかなくてもいいのよね。
去年、リーマン破綻前に、早稲田の浦田秀次郎氏がある経済誌で「ロシアのように資源に依存していて製造業が育っていない国はわりとすぐに立ち行かなくなる」というようなことを言っててなんか妙に印象に残ってたのですが、リーマン破綻後、その分析どおりだなあというようなことが次から次へと起こってるんですよね(ロシアの株価、去年のピーク5月時点から比べたら今は「8割減」すよ! 「8割になった」でも驚くのに、「8割減」っすよ!)。日本に付け入る隙があるのならこういう製造業方面での経済協力をちらつかせることかもしれないけど、いかんせん、不況なのはロシアだけじゃないわけで…… 本当にココが今、日本の優位の足がかりになるのかどうか分かんないすよね。
いずれにしても今回の点で私が「島にいる国境警備隊レベルでの判断じゃないな」と思ったのは、ロシア側が「2006年に改正した法に基づき」なんていうことを今さら持ち出してきたところ。2006年て…… 法改正してから今日まで、ビザなし入国カードなし渡航してきたじゃん。そこを今さらきっちりしようとしてきたということは……えーと、これはあくまでも個人レベルの推測ですが、去年秋の人事で対アジア外交の要職に日本との領土問題に関しては強硬派といわれている人がついたのと関係があるんではないかと。その人の体制が省内で出来てきたってことかも、とちょっと思ったりしています。だとしたら相当やっかいですよ。「政治的な理由で人道支援を中止するのなら、支援の真の狙いは何だったのかとの疑問が生じる」という着眼点自体、向こうはかなーり理論武装した上でこういうことを始めた兆候に思えますです。
領土問題に関して、日本国内にある最大の「つまずきの石」は無関心と感情論ではないかと私は思っています。ロシアでも、一般国民の中の最大の問題は「無関心」だそうだし。でもロシアの政府・議会・官庁・軍の各グループにおいて、「実効支配している土地を日本に物理的に引き渡すこと」と、「いったん(国際的にも)自国の領土と認めたことを覆す」ことのどっちがより重大な問題なのかとか、そういうところが知りたいですね。面子の問題なのか、資源採掘権の問題なのか、住民の問題なのか。ロシアにとっては何が一番重要なんだろう?
シロウトはシロウトなりに、飛び道具的解決案があります(麻生さんが前に言った面積二分割みたいなやつぢゃないですよ)。ま、ムリだろうから小説のネタにでもしちゃおうかな……。何にしても今回のこのニュース、シロウトはシロウトなりに頭イタイっす。
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