永久家族(『赤い星』の原点の一つとして)
今から10年前の1998年、NTTPCコミュニケーションズのネットプロバイダ、InfosphereのCMとして(確か衛星放送で)放送されていた、1話25秒(!)全53話という、けったいな番組があった。それが森本晃司のアニメ『永久家族』。はみ出し者の市民を集めてきて記憶を消し、「理想的な家族」として生活させてリアリティ番組を放送する……というモノ。超コマギレの放送スタイルのため全部見られなかった人が多く、その後「幻の作品」と言われていたらしい。
実はですね、放送終了後、これを30分枠のアニメ化する計画が持ち上がったのですよ。で、縁あってわたしもその脚本チームに入っていたのですね。
諸般の事情によってこの計画は実現しなかったのですけどね。
当時かなーりやる気のあった私のショックは大きく、正直、ちょっとしたトラウマになっていたのであった。でもその時に知り合った佐藤大さんとか、Ken→Goさんとか、西島大介さんとは、その後、なんかたまーに運命が交差して一緒に仕事したりしていて、今考えるとけっこういいご縁なのであった。特に西島大介は、当時すぐに「これはイケル!」と分ったので、SF大賞のパーティに連れて行ってSFマガジンの塩澤編集長に紹介したんだけど、その後ハヤカワでの彼の活躍は私の想像以上のものだったりしたのであった。
まあ、人間、いつどういう縁で何が起こるか分からないわけですよね。
で。
先日、またまた縁あってKen→Goさんと連絡を取り合う機会がありまして、この『永久家族』のことも思い出したわけです。恐るべしネット時代。その数秒後にはもう、今この作品がDVDで手に入ることが分り、さらにその数秒後には注文できていて、翌々日には手元にあってもう見ている、と。
懐かしい……
何もかもみな懐かしい。
そしてこれを見ていて一つ思い出したことが。
いつ何で思いついたのか分らないまま『赤い星』のために蓄積していたテレビ局がらみのネタの多くは、私が『永久家族』の脚本のために考えたものが原型だったということを。
そういやそうだったわ。
てことは、『永久家族』も『赤い星』の原点の一つってことかあ……
芋づる式にいろいろと記憶が甦ってくることです。この頃の他のこととかも。
「あの時、手に入らなかったもの」も巡りめぐっていつかは糧となるわけだけど、やっぱり、その時は辛いものですよ。『赤い星』の存在の背景にも、作者自身という「人柱」があるのだけど、このこと自体もいつかは創作の糧になるんだろうか。まあ『赤い星』本体のことはそんなに難しく考えないで下さい。基本、愛ゆえの妄想の物語ですので。
ところで『永久家族』のDVDには、25秒53話という構成について何も語られていないので、知らないで見た人は「何だこりゃ?」と思うらしい。やっぱり製作の背景について記しておいた方がいいんじゃないかなあ。それとも、そういう情報なしで潔く勝負しているのだろうか。後者だったらすごいけど、スゴ過ぎではないだろうか。まあ自分もあとがきではなーんにも語ってないけど、その理由は両者で違うような気がしてならない……
« 第120回GETライブ | トップページ | 亀は100万部 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント