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2008年3月23日 (日)

『2001年宇宙の旅』裏サントラ

むかーし、それはまだカセットテープとレコードの時代、「『2001年宇宙の旅』サントラ第二集」というものがあったのですよ。キューブリックが候補として考えておきながら結局映画では使わなかった曲を集めた、いわば「裏サントラ」ですね。

これがけっこう、いい選曲なのだ。というか、「ドナウ」とか使っちゃうくらいだったらこっちのほうが……みたいな曲がけっこうある。キューブリック……センスがあるんだかないんだか分からんお人だ。

選曲は以下の通り。

SIDE A
1. 「ツァラトゥストラはかく語りき」より導入部「日の出」 R・シュトラウス
2. バレエ「コッペリア」よりワルツ レオ・ドリーブ
3. 「ロンターノ」 ジェルジ・リゲティ   
4. 「軽い小船で逃れて」 アントン・ウェーベルン
5. 歌劇「薔薇の騎士」第三幕のワルツ R・シュトラウス

SIDE B
1. 「ツァラトゥストラはかく語りき」より「科学について」 R・シュトラウス
2. 「ヴォルーミナ」 ジェルジ・リゲティ
3. 「ガイーヌ」より「子守唄」 アラム・ハチャトゥリアン
4. 「レクイエム」より「ディエス・イレ」~「ラクリモーサ」 ジェルジ・リゲティ
5. 歌劇「ファウスト」よりワルツ「マルガレーテ」 シャルル・グノー

私はカセットテープを持っていたんだけど、実は今、もう無い。どうも引越しの時に無くした箱に入ってたっぽいんだよなあ。いずれにしても、カセットデッキにからみそうなキケンなワカメテープになってしまっていたので、もう大学生くらいの頃には聴けないシロモノだったのですが。でもなあ、それでもいいから持っていたかった……orz

今見るとものすごくいい選曲でしょ? 1962年初演のオルガン・ソロ曲「ヴォルーミナ」なんか、よく60年代後半に選んだなあ、と思う。

A面(そもそも「A面」「B面」がなんだか分からない若いキミ達は、おじさんおばさんにきいてみよう!)の1は言わずと知れたあの曲。2はドリーブのバレエ曲の中でも最もよく知られたワルツ。3は67年初演の大規模オーケストラ曲。67年……? ってことは、もしかしてキューブリックは初演を聴いていたのかも? デイヴ・ボーマンのスターゲイト移動中に使われる「アトモスフェール」と近い系統の曲。4はドイツ語詩の無伴奏合唱の小品だけど、ものすごーーーーくいい曲。「軽い小船で 陶酔しきった太陽の世界から逃れよ かつてなき優しき涙が 君の飛行のために流されよう」(<ちょっと自訳が気に入らんすんません)みたいな、まるで「2001年」のために作られたかのような暗示的な歌詞。でも実際は1908年書かれたシュテファン・ゲオルゲの詩です。でもあまりにもぴったりなので驚く。おそらく、キューブリックも曲のみならず歌詞にも惹かれたんだろうなあ。5の「薔薇の騎士」の第三幕のワルツは、オクタヴィアン扮する女中マリアンデルがオックス男爵を陥れるために怪しい料理屋の個室に行った時、最初に流れるあの曲(末尾はオックス男爵の「勘定だ!」の一言の後に入るクライマックス)。これものすごくいい曲なんだけど、シュトラウスはちゃんと単独のコンサートピースとして仕上げてたんですよね。あんまり録音する人がいないんだけど、ベームやブロムシュテットのCDあり。どっちもいいけど、今フツウに手に入るのはブロムシュテット盤。この裏サントラで使われていたのは1963年録音のベーム盤だけど、10年以上前にドイツ・グラモフォンが無造作に出した歌劇・バレエの舞踏曲のコンピにしか入ってないっぽいのだ。いやでもベームだったらちゃんと探せば見つかるのかも。

B面の1は「ツァラトゥストラ」の後半の部分。確か裏サントラでは「病より癒える者」と表記されていたと思うけど、実際には「科学について」から「病より癒える者」にまたがる部分。ここ大好き(笑)。2はリゲティのトーンクラスター時代のオルガン・ソロ曲。シンフォニック・オルガンの性能の限界に挑戦する、オルガン管理者にはあんまりありがたくない曲らしい。こういうの聴くと、ああ、CDの時代になってよかったなあ、と思う。レコードだと針飛ぶかもしんないです。いかにも、な前衛の曲だけど好き(笑)。ソニー・クラシックスのリゲティ・エディション第六集で聴けます。3は、映画で採用した「ガイーヌ」のアダージョとこっちとどっちにしようかなあ、と迷ったんだろうね、キューブリック。正直、ワタシ的には「子守唄」に一票。4はやはり、レクイエムのどの部分使うか迷ったのでしょう。まあ要するに、映画では「レクイエム」の前半を使って、後半を使わなかったっちゅうだけの話ですが。5も「ドナウ」の対立候補でしょう。「薔薇の騎士」「ドナウ」「コッペリア」「マルガレーテ」のどれを使うか考えて、結局「ドナウ」という結論だったんだろうけど……何故?! この四曲からだったら、私は「マルガレーテ」を選ぶけどなあ。ちょっと短いんだけど、もっとも「ドナウ」だって一部を切り張りして繰り返し使ってるんだから、「マルガレーテ」でも無問題じゃん。

これもCD化してくんないかなあ。でも、もしかしたらリゲティの版権とかで難しいのかもしれない。私は「ロンターノ」以外は全部CDで持ってるので、このCDは無いなら無いでもいいっちゃいいんだけど……なんか闇に葬るには惜しいラインナップ。今でも聴く曲が多いし、結局何だかんだ言って、「2001年」の選曲は私の人生を左右してるなあ、と、つくづく思うことです。

まだ先入観やへんな知識のない中高生のうちからシュトラウスやリゲティに親しめたのは、今となっちゃありがたい経験だったと言えましょう。しかし……同級生が可愛い恋の歌やたのきん系(笑)アイドルを聴いている頃にこんなものを聴いていた可愛くない少女だったワタシ。当然、可愛くない女に成長しました(笑)。もしかして、私の「女として」の人生を台無しにしたのはクラークとキューブリックなのか(笑)?

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コメント

はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています。

ムジカマキーナで、登場人物+ストーリーで、うちのオケで大旋風が巻き起こって以来、
作品は、単行本+SFマガジンに掲載された物だけですが、読ませて頂いています。
次の作品が出るのはいつかと、首を長〜くして、待っています。

2001年の裏サントラ、凄いラインアップですね。つくづく、リゲティとシュトラウスの
うねうねしたのが好きなんだなぁって・・・・。没になったのは、存在感が有りすぎて、音楽に
画面がまけてしまいそうだからでしょうか?

#薔薇騎士のワルツ、どのシーンで使う予定だったのでしょうかね・・・・・。裏サントラ
を使った裏2001年を、ちょっと見たいと思いました。

これからも、音楽SF、期待しています。指揮者/オルガン/声楽、ときたので、次は、弦楽器
奏者/制作者など、如何でしょうか?

投稿 Zeze | 2008年3月23日 (日) 21:52

はじめまして。
2001年宇宙の旅 第2集は先日Yahoo Auctionで\500で出てたみたいですね。チェックしていたらそのうちまた出るかもしれません。他にも中古レコード関係で調べれば出てくるかもしれませんね。

アイオーンからはまって、ラー、ムジカマキーナ、架空の王国までは読ませていただきました。新作を首を長ーくしてお待ちしています。

投稿 higurasias | 2008年3月23日 (日) 22:40

いらっさいませ。しかし……ひええ、ど、どのオケでしょうかsweat01 すぐにびびる小心者ワタシ。

「薔薇の騎士」はやはし「ドナウ」の対立候補だったんでしょうねえ。「あんまりR・シュトラウスばっかりでもなあ……」と思ってはずされたのかもしれないですけど、あの曲でオリオン号が飛んじゃってもよかったかなあ、とかちょっと思います。でもやっぱり「存在感が有りすぎて、音楽に画面がまけてしまいそうだから」というのが本当のところかも。でも「ドナウ」かよ(笑)。

「ドナウ」は目の前でナマのオケが演奏してても頭の中でオリオン号が飛んじゃうんですよね(笑)。きっと元旦にウィーンで聴いてもオリオン号が飛ぶでしょうねえ(笑)。十代の頃の刷り込みってコワイsweat02

新刊は「ロシア&江戸で『ボリス・ゴドゥノフ』をやる」みたいな感じです。今、出版社といろいろ折衝中ですが……時間かかりますのう……。もう少々お待ちくださいませ。

投稿 ふみお | 2008年3月23日 (日) 22:48

おおお、Zezeさんにレスを書いているうちにhigurasiasさんからの書き込みが。失礼いたしました。いらっさいませ~。

500円……orz でも確かに、そのアナログ・レコードがあったからといって、「よっしゃ買うぞー!」という人がたくさん出てくるシロモノでもないかも(笑)。でも手に入りやすいCDがあったらそこそこ売れそうな気もするし……

新刊は……ううっ、もう少々お待ちください。出前、今出ました、出ましたから(<ヲイsweat01

投稿 ふみお | 2008年3月23日 (日) 22:58

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